室外機を自動的にミストで冷却することにより,エアコンがとても快適になったので紹介します.
システム概要
作成するシステムの構成は下図のようになります.
主な機能要素は次の通りです.
- 電力計と屋外温度計によって,クーラーの稼働状況を把握
(屋外が暑くてエアコンが動いていればクーラー作動と判断) - クーラーが動いている場合,電磁弁を制御して室外機にミスト噴射
- 流量計で意図通り制御できているか監視を行い,異常時はメールで通知したうえで制御を停止
夏休みの自由研究的にとりあえず作ってみるだけだとここまでいらないですが,実際に家のインフラとして活用するには最低限このくらいの要素は必要になってくると思います.
効果
室外機を冷却した時の効果としては,まず単純にエアコンがとても効くようになります.外が炎天下だろうと関係なく,つけた直後からすごく冷たい風が出てくるようになります.
具体的な温度としては,吹き出し口の温度が1.5℃近く下がります.
これだけだと効果が定量的に分かりにくいので,噴霧パターンを少し特殊にしてデータ計測してみました.
次のグラフは,ミスト噴射を10分毎にON/OFFした時のエアコン吹き出し口の温度を熱電対で計測したものです.ミストが噴射されると急激に温度が下がるのが見て取れます.
もう1つの効果としては,消費電力の削減です.
次のグラフは,エアコンの消費電力を計測したものです.ミストが噴射されると消費電力が約100W低減できています.
※実は100Wの低減だけだと,水道料金と電気料金の収支が微妙になるのですが,ミスト噴射があるときとない時での条件を合わせた正確な比較は難しいので,ここでは深入りしないことにします.
ハードウェア構成
ハードウェアは,大きく次の5点で構成されます.
- 電力センサ
- 温度センサ
- 電磁弁および制御用ボックス
- ミストノズル
- 純水器
電力センサ
エアコン稼働状況を把握するために電力センサを使用します.
使うのは下記で紹介したシャープの HEMS です.おそらく,現時点(22年7月)で,200V エアコンの消費電力データをリアルタイムに取得できるのはこれくらいしかないと思います.
温度センサ
エアコンの動作状況を把握するために屋外の温度センサを使用します.単純に暖房と冷房の動作モードを把握するだけでなく,ミスト噴射の間欠制御のON/OFF比率を変えるのにも参照します.
使うのは,下記で作成した温湿度センサーです.
電磁弁および制御用ボックス
ミストをON/OFF するために電磁弁を使用します.
下記と同じようなハード構成でOKです.
少ない流量を図るため,今回は流量計をキーエンスの流量センサ FD-Q10C に変更しています.メーカはあまり売り文句にしていませんが,このセンサーは 0.01L/h の流量まで計測できるダイナミックレンジの広さにも特徴があり,今回のような小流量用途でもしっかりと計測できます.
Raspberry Pi で通信するために,下記の自作基板を使っています.
今回作成したボックスは下記のような感じになりました.
ミストノズル
室外機に噴霧するためのノズルです.
使用したのはカクダイの噴霧ノズル 576-112 と 576-122 です.
ノズルの仕様は下記です.通常の水道管の水圧 0.6MPa とかでも流量が0.06L/min と非常に小さいのが特徴です.
水道の蛇口とは塩ビ管やホースを経由して接続します.こんな感じ.
塩ビの接続については,下記で紹介しています.
水道の蛇口との接続は下記のようなコネクターとホースの組み合わせが便利です.
純水器
室外機が傷むのを防止するために水から不純物を除去する装置です.
『室外機の噴霧冷却時におけるフィン表面のスケール付着抑制』[キャッシュ] という文献には下記のような記載があります.
その本文では,定期的に RO 水でリンスすることでスケールの付着を防止する提案がなされていますが,これを実現するのはちょっとハードルが高いので,車好きの方の間で流行っている純水器を使うことにします.
具体的な装置については下記を参照願います.
配管とのシールはテープでも良いですが,下記がおすすめです.強く締めつけなくても確実にシールできますし,手直しも簡単で扱いやすいです.
ソフト
ソフトは GitHub にあげています.
まとめ
構成要素の領域が幅広いのでゼロから構築しようとするとなかなか大変ですが,動き始めるとかなり快適になるのでお勧めです.
コメント
凄いですね! 東京のオフィスビルの空調管理部門などに営業かけられそうなクオリティですね
昨今の電気代はべらぼうに高いので、水道代の上昇を加味しても電気代が〇〇円削減できる〜と言えば設備費用次第では普通にビジネスになると思います